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ピリピリ編集部から見たBigbeat LIVE ASEAN

2021年現在におけるASEAN市場の“リアル”な姿とは? 後編


「ASEAN地域での日本企業のビジネス展開を考える」を大テーマとしたビッグビート初のオンラインイベント「Bigbeat LIVE ASEAN〜おそとであそぼう!〜」。まさにいまASEAN市場に進出したスタートアップや、すでに現地で市場を確立している企業の方の生の声を始め、投資家や起業家、スポーツ分野の第一人者、そして経済産業省の方が集まり、2021年8月〜11月まで計4回、熱い議論が交わされました。そんな豊富なコンテンツを、テーマに沿ってよりわかりやすくお届けするこの企画。第一弾は「ASEAN市場の状況/やってみてわかったASEANの現場」と題し、「なぜいまASEANなのか」「市場状況はどのような感じなのか」「どの分野にチャンスがあるのか」「成功するポイント」「マーケティング戦略/SNS展開について」について前後編にてまとめました。 

 

ASEANでチャレンジする大企業たち 


ASEANで活躍している企業は、スタートアップだけではありません。日本の巨大製造業もASEANでチャレンジを続けています。 

ただ、かつての豊富で安価な労働力を求めたASEAN進出に対し、いまASEANに挑戦している製造業は、少し状況が違います。デジタル化が激しいASEAN諸国において、日本の資産ともいえる“ものづくり”のコンセプトを伝え、それを実現するIoTの活用法やカイゼン活動のノウハウを伝授し、人材育成や日本型のものづくりモデル普及に取り組んでいるのです。 

経済産業省に所属し、日アセアン経済産業協力委員会(AEM-METI Economic and Industrial Cooperation Committee:AMEICC(エイメック))のバンコク事務所所長を務める和田有平氏によると、タイを始めとするASEANでは、製造業のIndustry 4.0への成熟度を測る「Industry 4.0 Maturity Index」という評価軸が普及しており、成熟度向上に向け、IoTなどのソリューションを次々に導入する製造業が増えているそうです。 





「ただしこの評価軸はドイツで作成されたもので、IoTソリューションでASEAN市場のシェアを取りたい欧米企業の標準に合わせています」と和田氏は説明します。 

これに対し、日本型ものづくりのコンセプトとカイゼンのノウハウ伝授で人材育成を進めているのが、Denso(デンソー) International Asia (Thailand) Co., Ltd.の横瀬健心氏、Mitsubishi Electric(三菱電機) Factory Automation (Thailand) Co., Ltd.の矢作典路氏です。そのポイントは、IoTありきではなく、現場のカイゼン力を高め、生産性を上げながらスマート化していく“日本流ものづくり”にあります。 

デンソーでは2018年より、タイの産業支援活動の一環として長年培ってきた日本流の自動化の技術とノウハウを凝縮したものづくり教育プログラム「LASI」(Lean Automation System Integrators)を展開し、 製造業における無駄(LOSS)の理解、無駄を削減するノウハウとそのためのセンサーデータの使い方、カイゼン活動などについて教える取り組みを行なっています。 

また三菱電機も自社のものづくりコンセプトをタイの製造業へ伝授すると共に、自社工場のために策定したSMKL(Smart Manufacturing Kaizen Level)モデルを使い、その成熟度に応じたIoTの活用を支援しています。SMKLは縦横16マスのシンプル仕様で、縦軸に「見える化」、横軸に「管理対象」の範囲を取り、どの範囲がどのレベルに到達しているかを分析するツールです。 

この指標を使えば、中小企業でも少しずつレベルアップを進めていけるため、巨大投資やIoTへの刷新といった無茶な導入に踏み切る必要はありません。人材教育により、現場のカイゼンを担う担当が増えてくれば、生産性や効率性が上がるので、それを原資にレベルアップを続けていくことができます。 

これらの取り組みは、経産省やJETRO、AMEICCなどの協力の下、タイ政府や専門家の後押しを受けて進められており、「手応えを感じています」(デンソー横瀬氏)とのこと。また三菱電機では、SMKLの国際標準化を目指しており、国際標準化団体との協力体制を強化しています。 

モノやサービスを売るだけではなく、これまで日本が培った知見を生かした人材育成など、ASEANでのビジネスの可能性は大きな広がりを持っています。なおAMEICCとJETROでは、そうした知見やテクノロジーを持つ日本のスタートアップのASEAN進出を支援しており、2020年以降で合計40件のプロジェクトが採択されているそうです。 

 

ASEAN進出の最大の課題「マーケティング偏差値」を伸ばすには 


ASEAN進出を決めたとして、翌日早速現地に行って商品を売るというわけにはいきません。「誰に」「何を」「どうやって売るか」を考える必要があります。これがマーケティング体制の整備です。 ただ残念なことに「日本企業のマーケティング偏差値は低すぎる。グローバルなマーケティングのノウハウがなければ、ASEANに進出中の欧米企業にはもちろん、現地のローカル企業にも歯が立ちません」と警鐘を鳴らすのは、シンフォニーマーケティングの庭山一郎氏です。 





庭山氏によると、「BtoB企業の売上の70%は販売代理店から作られている」とのことで、だからこそ「パートナーリレーションシップマネジメント(PRM)」が最も大切だと説明します。 
 
PRMは、まずターゲットを定義することから始まります。どの国のどんな産業なのか、そのなかでどれくらいの規模の企業なのか、どの部署で何を担当している担当者がターゲットなのか。それが決まれば、ターゲットに太いパイプを持っている販売代理店をリサーチし、契約します。販売に当たってモチベーションの鍵となるインセンティブを設定し、必要なトレーニングや販促ツールを準備し、販売に当たっての支援を行い、発掘したリードを案件創出に促すためのデマンドジェネレーションを構築しなければなりません。ただ、こうしたノウハウや専門性を持つ日本企業はほとんどないのが現実です。そして、そのために日本のマーケティングレベルは低いままなのです。 

その理由について庭山氏は、「日本企業の場合、ノウハウも専門分業の重要性も知らないため、ターゲットの設定からリードの発掘から需要喚起、案件創出、クロージングからカスタマーサクセスまで、すべて営業の役割になってしまっています」と指摘します。下手をすると、「この商品を何億円分、タイで販売してくれ」と指示するだけで、ターゲットの設定もしていないケースもあるとのこと。本社に確認しても「ターゲットを設定することが営業の仕事」と一蹴されることも。 

庭山氏は「本来であれば、市場に最適な製品・サービスを作って流通や価格を整え、販促し、ターゲット市場のリードのデータを集めてナーチャリングし、市場を育て、その先にセールスがある。この基準がしっかり取れていれば、マーケティングから営業活動の整合性は取れ、スムーズに物事が動くはずです」と話します。  

世界では、セールスはハンター(狩猟者)ですが、マーケティングはファーマー(農家)で、最低限このフォーメーションを組むことが、グローバルなマーケティング手法です。さらに、ものづくりとマーケティング、セールスの連携をより強化すると、収益性も成長もより高くなるという調査結果もあるそうです。ASEAN市場進出に当たり、自社のマーケティング偏差値を高めておく必要があります。 



編集後記
国内では広く知られていないASEAN市場の実態を省庁、起業家、大企業の各視点から解説してきた本記事。記事でご紹介させていただいた通りASEAN市場の成長は、想像をはるかに超えた勢いとなっています。日本企業がASEAN市場成長の果実を頬張れる期間は、私たちが想像するよりも短いのかもしれません。進出を悩まれている企業様は、まずは飛び込んでみる精神で参入をされてみるのもいかがでしょうか。
次回は、ASENA市場に参入した日本企業から学ぶ、ASEANで新たな市場を創造するためのポイントをご紹介します。

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