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ピリピリ編集部から見たBigbeat LIVE ASEAN

2021年現在におけるASEAN市場の“リアル”な姿とは? 前編

ASEAN地域での日本企業のビジネス展開について様々なコンテンツを届けたオンラインイベント「Bigbeat LIVE ASEAN 〜おそとであそぼう〜」。まさにいまASEAN市場に進出したスタートアップや、すでに現地市場でのポジションを確立している企業の方の生の声を始め、投資家や起業家、スポーツ分野の第一人者、そして経済産業省の方が集まり、2021年8月〜11月まで計4回、熱い議論が交わされました。そんな豊富なコンテンツを、テーマに沿ってよりわかりやすくお届けするこの企画。第一弾は「ASEAN市場の状況」と題し、「なぜいまASEANなのか」「市場状況はどのような感じなのか」「どの分野にチャンスがあるのか」「成功するポイント」「マーケティング戦略」について前後編にてまとめました。 
 

ASEAN市場はなぜ魅力的? デジタル分野の成長・進化で広がる可能性 

ASEAN(Association of South‐East Asian Nations:東南アジア諸国連合)とは、インドネシア、 カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオスの10カ国による地域政府間組織を指し、この10カ国だけで人口6億6000万人以上、総面積は452万平方キロメートルと、巨大な経済圏を築いています。 経済産業省 アジア新産業共創政策室 室長の前田翔三氏によると、「アジア市場は2000年代に急成長を遂げ、日本メーカーの製造拠点としてではなく、事業拠点として期待が集まるようになりました。その結果、国民1人のGDPも大きく伸びて中間層が拡大、購買力が大きくなりました」と説明します。 そしてASEANが注目されているもう1つの背景にあるのが、デジタル化やスタートアップ投資に対する世界中からの高い期待です。 





実際にスタートアップ投資に関して見ると、日本国内は年間5000億円規模という状況に対し、東南アジアだけで1兆円規模、インドでも1兆6000億円〜1兆7000億円という金額がスタートアップに投資されています。毎ラウンド1000億円以上の資金を調達するメガコーンもいくつも登場しています。 

そんなASEANスタートアップの特徴は、規模もさることながら、「社会課題をデジタルで解決する」という社会起業家の側面を持っていること。医療格差や脆弱な物流網といった社会課題を解決するデジタルプラットフォームを興し、瞬く間に市場を席巻、そのサービスが生活のなかにしっかり根を下ろすというわけです。また、そうしたプラットフォーム事業で収集したデータを活用し、新事業に進出したり、新たなネット金融サービスを展開するなど、変化が激しいのも特徴です。 

そしてこうした ASEAN スタートアップと協力してビジネスを興し、自分たちの世界戦略につなげていこうと考えているのが巨大IT企業や欧州企業です。いまやビジネスアイディア、人材、お金の大半がASEANに集まっているといって過言ではありません。 ではこうした状況で日本企業はどのように存在感を示していけばいいのでしょうか。前田氏は「社会課題解決型の動きは、今後より深化する」と見ています。特に物流や医療などは、制度やインフラ整備にかかわる課題も多く、一気にすべてが解決できるわけではありません。 

しかし逆に、こうした分野は日本が得意とするところであり、すでに培った技術やノウハウがあります。そうした技術や知見を持つ企業が、ASEANのデジタルスタートアップと協業することで、日本をルーツとする新たなイノベーション創出につなげられる可能性があります。 まだ成長ポテンシャルが著しいASEAN。その成長構造を深く理解し、課題解決に向けた価値共創に取り組むことが、ASEAN進出への鍵となりそうです。 

 

起業家・投資家が見るASEAN進出の成功ポイント 


実際にASEAN市場でビジネスを展開している起業家や投資家は、市場をどう捉えているのでしょうか。 

VC事業を展開するリブライトパートナーズの蛯原健氏によると、前出の前田氏と同じく「世界中でデジタルトランスフォーメーション(DX)の大ブームが起きており、ASEANもこの分野が大きく成長しています」と話します。2010年半ばから医療や物流、農業といった分野でインターネットを活用したイノベーションが加速し、その流れでFinTechも急激に伸びました。また、業種・業態ごとに、課題解決型のSaaSサービスが次々と登場し、業種全体の改革も進んでいるそうです。リスクコンサルティング会社のKroll Associates (S) Pte. Ltd.の川端隆史氏も、「新興企業が短期間で急成長し、東南アジア最大規模の企業になるなど、成長・変化のスピードがすさまじい」と評します。 

そんなASEAN市場で成功するポイントについて、タイを拠点にFinTech事業や企業同士のマッチング事業を手がけ、成功を収めているSYNQA Pte. Ltd.の長谷川潤氏は、自身の取り組みを振り返り次のように分析します。 1つはマクロで成長率を見て、どれくらいシェアを取れるのか分析すること。もう1つは、自分がやりたい事業がその国の市場にフィットするのかを見きわめること。一口にASEANといっても、民族も生活様式も文化も言葉も異なるため、現地の人たちが本当に求めるものなのか、事前のマーケットリサーチは欠かせません。それを踏まえ、最後に、各国の規制や優遇措置なども考えて、事業をスタートする拠点を選定していくことです。 





これらを前提とし、長谷川氏は「社員の国籍は多様で30以上にわたっており、それぞれの国に溶け込めるのがメリット」と、ダイバーシティの重要性についても言及。「ASEANの日本企業と仕事を進める際には“日系企業”となり、タイでは現地の“ローカル企業”として見てもらえます」と説明します。 

そして「ASEANはすでに自動車や製造業など日本の大企業が進出しており、そのネットワークでビジネスが広がることもあります」(長谷川氏)とASEAN市場のメリットを語り、投資家の蛯原氏もこれに同意しました。 

 今後の注目市場として、蛯原氏、長谷川氏共に「医療系や保険業、生活用品販売、SDGs関連」を挙げています。さらに「進出にはさまざまなリスクも考えられるが、ポートフォリオを組んで対応すれば恐れることはない。むしろ、挑戦しないことが最大のリスクです」(蛯原氏)と話し、ASEANへのチャレンジを促しました。 

 
 

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